インタビュー

【インタビュー】大坪商介(おおつぼ しょうすけ)

Pocket
LINEで送る

 

 

今回のマンガロイドインタビューは、マンガ家(漫画監督)の大坪商介(おおつぼ しょうすけ)です。

当サイトの編集人です。
今回のインタビューでは、エクゾジャケットのプロジェクトが始まったキッカケや、漫画の連載に至った経緯などなど、編集部員の私も知らなかった話をいろいろと聞き出すことができました。

現在「海猿」や「ブラックジャックによろしく」を描いた佐藤秀峰先生のWEB雑誌「マンガ on ウェブ」で、漫画「エクゾジャケット」を連載していますが、「マンガ on ウェブ」創刊号では、マンガロイド(3DCG漫画)についての特集が組まれ、マンガ業界内で大きな注目を集めました。

漫画「エクゾジャケット」は、AppleのibooksのSFとミステリーと2つのカテゴリーで1位、ニコニコ静画では青年漫画部門で1位にランキングされたことや、ほぼ全てを3DCGで作画していること、また大坪自身が絵が描けないことなどもあって、さまざまな分野で話題の作品になっています。

昨年100万人に広がった3DCG漫画も大坪が手掛けているのですが、絵が描けないマンガ家が台頭してくる時代が、既に現実のものになっています。

果たしてどんな話が飛び出すのか…。

それでは本編をどうぞ~。

 

——————————————————————————————

【マンガロイド編集部】
今日は、よろしくお願いします。

【大坪商介】
初めて読んでいる人もいるかと思うので、知っていることも含めていろいろと聞いて下さい。

【マ編】
分かりました。大体の状況は掴めていると思うのですが…。
最初のキッカケから、詳しく聞いて行きたいと思います。

まず、エクゾジャケットのプロジェクトが始まった経緯から話を伺いたいのですが…。

【大坪】
いろいろとあるので、どこから話したらいいですかね…。

【マ編】
一番最初からお願いします。

【大坪】
一番最初というと、、2005年の夏ごろですねぇ…。
いや、2011年から始まったとも言えるかな。

【マ編】
どういうことですか?

【大坪】
2004年にIT関連の会社から独立して自分の会社を作ったんですけど、当時、一生を掛けて取り組めるようなビジネスのネタを探していたんです。

【マ編】
はい。

【大坪】
そうしたら、ある雑誌に大阪産業創造館の中で石黒周さんが「ロボットビジネス起業塾」というのを始めるという記事が載っていて、「これだ!!!」と思ったのが、このプロジェクトの始まりです。

【マ編】
2005年ですか…、随分前の話ですね。

【大坪】
「ロボットビジネス起業塾」のセミナーに参加して、自分でのロボット関連のビジネスを始めようと思って、専門雑誌買ってきたりネットを調べまくって、参入の糸口を当時は探していました。

【マ編】
何か、ロボットの技術は持っていたんですか?

【大坪】
全く(笑)
一応理系なので、とは言っても建築学科だから全然理系じゃないんだけど…、いろいろと探した結果、一つだけロボットビジネスに参入できそうな分野があったんですよ。

【マ編】

どういう分野ですか?

【大坪】
小型ロボットの外装を作るビジネス。

当時KHR-1という近藤科学が出している小型ロボットがあって、偶然にもうちの会社の近所なんだけど、外装がなくて筐体がむき出しのまま売られていたんです。
この小型ロボットの外装パーツ作って売ることからロボットビジネスに参入しようかなと…。

【マ編】
なるほど。外装パーツから入れば、ロボットの中身を作れなくてもロボットビジネスに参入はできますね。

【大坪】
当時のロボット関連のビジネスは、産業用ロボット以外の分野は立ち上がっていなくて、ホビー分野のロボットがKHR-1で立ち上がったばかりだったので、しばらくは飯を食うには厳しい業界だなと…。

【マ編】
今でこそペッパー君や、Robiとかも出てきてだいぶ認知も広がっていますよね。

【大坪】
そうですね。
当時ホビー以外では、唯一、ロボット科学教育という会社がロボットを使った子供向けの塾を開業して人気を集めていたくらいで、なかなか売り上げが稼げそうな分野がなかったんです。
そこで考えたのが、今後10年はロボット業界で大きなマーケットはできないだろうから、ロボットをメディアに乗っけてエンターテイメント分野で、勝負しようかなと…。

【マ編】
はい。

【大坪】
具体的には、うちが販売する外装を付けた小型ロボットを、マンガ雑誌とコラボさせてメディアに大きく露出させて、外装を大量に販売しようというのが、当初の計画でした。

そんな事業をやっている内に、ロボット関連の人脈を徐々に築いて資金も集めて、中身も作れる本格的なロボットベンチャーにしよう・・・と。

メディアにコンテンツを露出・拡散させるのは、学生時代の経験や、前職のときに600万人に広がる企画を自分で制作(執筆)した実績があったので、圧倒的に自信がある自分のコンテンツ制作能力を使ってメディアにロボットの情報を拡散させれば、パーツの販売は軌道に載るだろうなと考えてました。

【マ編】
なるほど。

【大坪】
だけど、2005年~2006年当時はロボットビジネスへの参入を断念しました。

【マ編】
どうしてですか?

【大坪】
理由はいくつかあって、いくら調査や試算をしてもスケールする感触が得られなかった事と、もう1つは、10年でサービス分野のロボットマーケットが立ち上がらなかったときに、蓄積した技術を他に転用できる見込みがなかったので、投資する時間とお金に対してのヘッジができないな…と。

あとは、当時全く別の大きなビジネスチャンスが舞い込んで来てしまったので、ロボット関連のビジネスを立ち上げるのは、中断してしまいました。

【マ編】
先ほど、プロジェクトが2005年、もしくは2011年に始まったというのは、そこら辺に繋がってくるのですね…。

【大坪】
そうなんです。
それでロボットビジネスへの取り組みを再開したのが2011年3月。

「スケルトニクス」が、あの動画を公開した時でした。

【マ編】
この動画は当時、大きな反響を呼びましたからね…。

【大坪】
3.11の震災があって、いろいろな心境の変化もあって、立ち上げようと思っていた安パイな別のビジネスを途中で完全に撤退させて、不確実性の高いロボットベンチャーを立ち上げることに切り替えたんです。

【マ編】
なるほど。

【大坪】
以前考えていた、小型ロボットに外装を付けマンガ化にして、メディアに拡散させるビジネスは、ある程度広がること予測はできたけど、100%の自信はなかった。

小型ロボットは目新しいのだけれど、ちょっとコンテンツとしての強さが足りないかな…と。

だけど、スケルトニクスの動画を見たら、パワードスーツは人間がそのままロボットに載れるので、これはメディアに載せるのも簡単にできるし、ロボットビジネスを立ち上げるキッカケとしては、小型ロボットの外装から入るよりは面白いかな…と考えたんです。

【マ編】
確かに、小型ロボットよりは、パワードスーツの方が大きなインパクトはありますね。

パワードスーツの制作にあたって、どのような点に気をつけましたか?

【大坪】
パワードスーツのアイデアはスケルトニクスから着想しているので、なるべく構造が似ないように気を配りました。

具体的には、異なる部分3つ程あるのですが、

1つ目が、足の機構をスケルトニクスとは異なり逆関節にすることで、別のリンク機構を採用しました。別構造のリンク機構であれば違いが明確になるし、チャレンジし甲斐があるかなと…。

2つ目が、上半身と下半身ともに人力ではなくロボット化することでした。特注のオリジナル基盤を発注して、電動化することに成功しましたが、下半身の電動化はリスクが高いので、動画撮影の際は人力に戻しています。

3つ目は、これはあまりうまく行かなかったのですが、外装をもっとカッコよくするということでした。キャノピーをバイクのパーツから持って来たり、工夫を凝らしたつもりだったのですが…。

【マ編】
見た目としてはかなり似ていましたよね(笑)

【大坪】
そうですね。いろいろと違いを作ったつもりだったのですが、パワードスーツが素体に近いものだったので、結果として見た目の印象としてはかなり似通ってしまい、動画を公開したときにネット上でお叱りをいろいろと受けました。特許技術に抵触があった訳でもなく法律上も何も問題がなかったのですが…、カウルが白かったのが同じ印象を与えてしまい良くなかったのかもしれません。カウルの白さは、スタイロフォームを硬化させる塗料の色が元々白かったので同系色となってしまったのですが、別の色で着色しておけば全体的な印象も変わったかもしれません…。そこまでは時間的な部分で対応が難しかったです。

当時はまだスケルトニクスは株式会社化していなかったので、将来的に競合になるのかどうか分からなかったのですが、感謝の気持ちと仁義を通す意味を含めて、機体が出来たときにスケルトニクスのメンバーを会社呼んで、機体を見てもらったりしていました。

【マ編】
そういえば、いらっしゃってましたよね。

【大坪】
もともと搭乗型のパワードスーツの市場は存在しないものなので、両社が切磋琢磨することで、マーケットが育つ可能性があるかなと考えていました。
例えば、東京ディズニーランド等に大量に納入したり、お台場のイベントとかでアトラクション施設を作ったり…。
1社だけでやっているのであれば本当に産業化するのか誰も判断ができないと思うのですが、多くの人間が関わることで可能性が広がるかなと…。人が集まり、情報が集まり、お金が集まることで化学反応がおきて徐々に形になる。

【マ編】
多くの人が集まる必要があると考えていたのですね。

【大坪】
現時点では、僕の方は佐川電子(株)を離れてしまっているので、今後パワードスーツの実機制作を行うことはもうないのですが、スケルトニクスの方々には、本当にがんばって欲しいですね。佐川電子の方は、もうパワードスーツを本格的にはやらなそうな雰囲気なので…。
人・金・物をキッチリと組み上げて行けば、USJや東京ディズニーランドに数百台納品とか頑張ればできるハズです。搭乗型パワードスーツ100体の行進を「ロボティカルパレード」とか名前をつけて宣伝すれば、かなり評判を呼ぶと思いますよ。そうなるとメンテナンスも必要になりますし、定期的な収入も確保できるようになります。来たるべき未来へ向けて本格的な技術開発を長期間に渡って行える算段も立ちます。

【大坪】
ただ、ひとつ気がかりな点もあって、僕がエンターテイメント分野におけるパワードスーツ実機展開を諦めた理由でもあるのですが、安全面での問題です。

【マ編】
はい。

【大坪】
実際にパワードスーツに乗って、動画を何本か作ってみたり、役者さんにパワードスーツに乗ってもらったりしたのですが、転倒時にかなり危険な状態になります。中途半端な取り組み方では、事業展開するにはかなり危険であるという判断です。

役者さんに乗ってもらうときは、撮影保険に入るなど、万が一のことを考えて万全の準備をしていたこともあり、何事もなく無事に済んだのですが、例えば来場者にパワードスーツに搭乗してもらうなどの展開を考えた場合、徹底した安全管理が必要になります。

これを実現するには、この事業だけを立ち上げるくらいのリソースを割かないと実現が不可能だと思いまして、3DCG漫画のPRとしての位置付けだけでは、実機運用はリスクが高すぎると判断したわけです。

【マ編】
確かに、動画撮影時は、作品のクオリティというよりは、転倒しないかどうかだけが、気がかりでしたね。

【大坪】
もっと言うと、自分の会社の安全面だけであれば、徹底した管理を行うことで安全面を確保できる可能性はあるのですが、同業他社が事故を起こしてしまった場合、こちらでは手の打ちようがありません。
他事業者の安全面の徹底はコントロールできない領域になります。
以前、撮影保険に入る等々のノウハウを共有しようと思って、提案をしに足を運んだこともあったのですが、話を聞いてもらえる状況ではありませんでした。
安全面の取り組みがしっかりできる可能性があれば、3DCG漫画のPRとしても実機活動をまだまだ続ける可能性があったのですが、実機の運用は大変危険な部分がありますので、パワードスーツ実機運用からの撤退を決断した状況です。

【マ編】
なるほど。

【大坪】
安全面の運用だけをぎっちりと完璧に整えることができれば、東京オリンピックの開会式という大イベントもあるので、クールジャパンコンテンツとしてまだまだ伸びしろがあると思います。

【マ編】
やり方次第で、今後も広がりそうです。

 

【マ編】
実機が完成して公開された「パワードジャケットMK3」の動画は、海外の反響も凄まじかったですね。

【大坪】
これは予測通り行きました。
すぐに100万回再生になって、海外のメディアに把握できないくらい転載されて、非常に大きなインパクトを与えたと思います。

編集部/注)なぜか、パナソニックのパワードスーツよりランキングが上に…。5位にランクイン!

編集部/注)Cybathlonの紹介動画にも、いつの間にか使われておりました。45秒辺りです。

 

 

【マ編】この動画は、どのような目的で作られたのですが?

【大坪】
当時は2つの会社の代表を兼務していたので、非常に微妙なバランスを取りながら動画を作りました。
つまりロボットベンチャーの佐川電子(株)の宣伝になることと、漫画の宣伝にもなる…そんなコンセプトで動画を作りました。

【マ編】自由に作ったわけではなかったのですね。

【大坪】
非常に関係各所に気を使いながら台本を書きました。
一日で執筆したので、時間的にもギリギリでした。

パワードスーツ自体は、アメリカの企業とかと比べると、予算的には数千分の一しかないので、大した事はできません。重いものが持てる訳ではなかったですし、技術的にも高度なものはありません。
なので、文化的な側面でインパクトのある動画を作る必要がありました。

「この技術凄いでしょ!」というコンセプトの動画だと、全然凄く見えないんです。

ある程度の技術と、エンターテイメント作品として尖がった動画であれば、アメリカでもまだ制作している人はいないので、行けるかなと思っていました。

 

【マ編】
そこで傷柳三太郎が出てくるのですね。

【大坪】
そういう訳でもないのですが…(笑)

何と言うか…、傷柳は、禁じ手なんです。

普通はやっちゃいけない。
だけど、知名度も何もない状況だったので、ギリギリの線をつくしかなかったというのが本当のところです。

再生数も300~400万回再生はされると思っておりましたが、現在までの累計で言うと、複数の動画サイトに転載されているものを合計すると250万再生くらいなっています。

今年に入ってからも50万再生以上伸びているので、最終的には300万~400万再生は行けると思います。

 

【マ編】
現在の3DCG漫画には、どのように繋がったのですか?

【大坪】
ロボットベンチャーから、3DCG漫画にピボットしたのは、本当に偶然からでした。
まさか、3DCG漫画という分野があるとは、ロボットビジネスに参入したときは夢にも思ってなかったので。

【マ編】
現在の、3DCG漫画の動きは、偶然からの出発なんですね。

【大坪】
やっぱり、自分で必死に考えて計画していろいろと頑張っても、急にやってくる無限大の何かが、すべてを変えてしまう・・・というのは人生によくある事だなと思います。

リーンスタートアップの本とか読むと、ピボットの重要性を説いているけど、世の中の変化に合わせて自分の考え方や行動を変えることが重要だなと思います。

まぁ、そんなチャンスに出会えることは、人生においてほとんどないんですが…。

【マ編】
3DCG漫画が、「急にやってきた、無限大の何か」ということですね。

 

【大坪】
そうです。

一緒に佐川電子(株)を立ち上げた技術者の町も、一緒に1年ほど仕事をしてみて、僕から業務に口を出されて動くよりは独立して動きたそうな状況だったので、2013年11月に佐川電子(株)の代表は町に譲って会社を抜けることにしました。その方が彼も儲かるし、やる気も出て良いだろうなと…。僕としては現在までに1円も受け取っていないので投資しただけの状態になっておりますが、今後の佐川電子の活躍に期待している状況です。

 

【マ編】
そこから3DCG漫画に専念される訳ですね。

【大坪】
そうですね。ロボットベンチャーは30年スパンの計画だったのですが、3DCG漫画であればスマホの普及振りを合わせて考えると、10年で新しいマーケットを自分で作ることができます。

技術革新によって、絵が描けない人が漫画家になれる時代が来るということですから、これは今までの漫画の歴史の中でも最大の変化が訪れることになります。

【マ編】
最大の変化ですか?

【大坪】
はい。最大の変化です。
漫画の歴史を俯瞰してみた場合に、ここまでの大きな変化はまだ起きた事がありません。
絵が描けない人が漫画家になれる…ということは、そのような大きな変化が起こるという事なんです。

一番情報を持っている僕の中では、すでに確定した未来なのですが、数年経てば多くの人が気付くと思います。
もっと分かりやすく言えば、アニメ化されるようなビッグヒットする3DCG漫画作品が1つ生まれれば良いだけなのです。
10年経てばマンガロイド(3DCG漫画)は、完全に浸透して、新しい漫画マーケットを形成していると思います。
勝手な予測ですが2025年になると、65%位の方が手書きの漫画を作っていて、残り35%位の人が3DCGでマンガを作るようになっていると思います。「無理でしょ!」や「いや、行けるかも…」いろいろな反応があるかと思いますが、かなり近い結果になると思います。

【マ編】
10年後の答え合わせが楽しみです。

もともと漫画を3DCGで作る予定だったのですか?

【大坪】
当初は、漫画を制作するに当たってネームだけは自分で描いて、作画は誰かマンガ家の方にお願いして漫画を作ろうと思っていました。
ただ、調べていってテストを繰り返している内に、あるソフトとあるソフトを組み合わせると、3DCGでも作画ができることが分かって来たんです。
このときは、この技術革新の今後の影響の大きさを考え、震えがきました…。

【マ編】
コミスタと六角大王の組み合わせですね。

【大坪】
そうです。そうです。
これだったら作画を頼まないでも、自分で全部作ることができるかなと…。

セルシスが2011年12月に六角大王を買収したんですが、その3ヵ月後の2012年3月にコミスタ内で六角大王の3DCGデータが描画できるようになったんです。

この瞬間が、絵が描けないマンガ家が登場する為の技術的な分岐点になりました。

技術的なことや政治的な背景もあって、当時、誰も気づいていませんでした。

【マ編】
それまで3DCG漫画はなかったのですか?

【大坪】
あるにはあったけど、レンダリングだけで、つまり3Dフィギュアを手でトレースせずに、3Dデータのまま描画できるようになったのは、コミスタが六角に対応したことが決定的でした。

コミPO!も2010年12月頃に発売されていたけど、オリジナルのキャラクターにすることが難しいのと、自由に表情やポーズを作ることができなかったので、本格的な漫画を作るには厳しかったんです。
笑顔とかも決められたものから選ばないといけなかったですし…。
あとは3DCGを使っているプロのマンガ家の方もいたんですけど、背景で使う場合が多くて、キャラクターで使うとしてもトレースする方がほとんどです。

その点、コミスタ+六角大王は、「さし絵スタジオ」というソフトを使えば、キャラクターも自由に改造ができたし、ポーズもクーマリオンという画期的なフィギュアデバイスのおかげでサクサク作れたので、トレースすることなくレンダリング描画だけで漫画を作ることができたんです。

レンダリング画像だけでマンガを作れることが、文化的側面においては非常に重要なんです。

【マ編】
それはどうしてですか?

【大坪】
絵が描けない人も漫画家になれるからです。

絵が描けない人が、漫画家になれることがなぜ重要かと言うと、マンガの絵の技術の習得に費やす時間を、他の人生経験に振り替えることができる為です。

【マ編】
豊かな人生経験があれば、それだけ濃密な漫画を描けますよね。

【大坪】
そうですね。
例えば、昨日まで甲子園を目指していた高校球児が、引退した翌日から3DCGを使ってリアルな高校野球の青春漫画を描くことが可能になるんです。リアルな空気感を出すには、高校野球を経験している人の方が、経験していない人より圧倒的に有利です。

【マ編】
なるほど。よりリアルな世界観を持った漫画が登場しやすくなる訳ですね。

【大坪】
高校野球を3年生の7月に引退したとして、8月からマンガ制作に取り組めば、卒業する3月までに漫画家デビューすることも可能になると思います。

【マ編】
実際に、できますかね?

【大坪】
まだ実際の事例はありませんが、これは時間の問題で、いずれこのような経歴を経てデビューする漫画家が必ず出てきます。
高校野球ではなくて、バスケやテニスや、大学受験や留学をテーマにしたマンガかも知れませんが…。

【マ編】
確かに可能性は高そうです。

レンダリング画像を使った、つまり絵が描けない人が手掛けた3DCGでのヒット漫画は、いつ頃出てくると予測していますか?

【大坪】
的確な質問ありがとうございます(笑)。

実は、もうあります…。
具体的には3作品あるのですが、その内の2つは僕が直接手掛けています。

一つ目は、このインタビューでも登場した「エクゾジャケット」というパワードスーツの漫画です。ibooksのSFカテゴリーで、今もランキング1位を飾っている作品なのですが、佐藤秀峰先生のWEB雑誌「マンガ on ウェブ」でも連載させてもらっています。
ニコニコ静画でも青年漫画ランキングで1位になりました。

 

【マ編】
WEB雑誌「マンガ on ウェブ」での連載は、どのような経緯で始まったのですか?

【大坪】キッカケは、2014年の2月に「絵は描けないけど、マンガを作ってみた」という動画を、niconicoの中で公開しまして、3DCG漫画=マンガロイドっていう新しい文化がこれから生まれてくるよ…という内容の動画だったんですけど、技術的な内容にも関わらずアクセスランキングが一時3位になるなど、一部の方々からかなりの反響がありました。

【マ編】2013年に漫画「エクゾジャケット」は公開されていましたが、2014年になって3DCGでマンガを作られていることを公表されたのですか?

【大坪】そうですね。エクゾジャケットは2013年の6月に第一話を公開したのですが、2014年2月の動画公開までは3DCG作画であることは半年以上隠していました。まぁ、、隠さなくてもすぐにバレる…とは思っていたのですが…。

【マ編】3DCG作画であることは、すぐにバレなかった?

【大坪】niconicoの静画では、2万人以上にマンガが読まれていたのですが、誰も「3DCGじゃん!!!」とコメントしてくる方は、いませんでした。

【マ編】みんな3DCGとは、気づかなかったと?

【大坪】気づいた人もいるとは思いますが、トーンが大量に貼ってある手書き漫画に見えなくもないので、分からなかったかも知れません。他に同じ制作手法で3DCG漫画を作られている方はいらっしゃらなかったので・・・。

【マ編】クーマリオンの漫画への活用も印象的でしたけど、あれは他の漫画家の方も使われているですか?

【大坪】今は分かりませんが、当時は誰もマンガでは使っていなかったと思います。

キャラクターまで3DCGで制作されるプロの漫画家の方はほとんどいないので、今も使っている人はいないかもしれませんが・・・。

【マ編】クーマリオンを使うと、どのくらい作画作業が早くなるのですか?

【大坪】どのようなシーンの内容が含まれているのかにもよりますけど、マウスだけでポーズを作るよりは圧倒的に早いです。

マンガを作るには、大量のポーズ設定をしないといけないので、1つのポーズだけでしたら3-4分くらいの違いで済むと思いますが、それが数十個あるとなると作業時間に大きな違いが出てきます。

【マ編】その流れから、どのような経緯で連載に至ったのですか?

【大坪】その時の動画の内容が「ねとらぼ」や「ロケットニュース24」等のニュースサイトに取り上げられたのですが、佐藤秀峰先生が運営されている「漫画 on WEB」からもマンガロイドの取材をして頂きました。

【マ編】佐藤秀峰先生が、直接取材に来られたのですか?

【大坪】当時アシスタントされていて、現在「シェアバディ」をスピリッツで連載している漫画家・吉田貴司先生と、佐藤秀峰先生の2人で来て頂きました。正直、びっくりしたんですけを…、超一流の漫画家の方に興味を持ってもらえるなんて、ホントに光栄でした。

【マ編】そのことがキッカケで、連載することになったんですね?

【大坪】そうですね。その後、秀峰先生がWEBマンガ雑誌を立ち上げることを耳にしまして、こちらから問い合わせたところ、すぐに連載することになりました。

【マ編】随分、あっさりとしてますね?

【大坪】はい…、うれしかったですね。で、驚いたのが、創刊号の特集としてマンガロイドについて取り上げさせてくれ!というメールが来まして、マンガロイドの特集が組まれることになったんです。他にも特集があってその中の1つかな…と思っていたら、マンガロイドだけだったので大変驚きました。

 

【マ編】
3DCG漫画でヒットした他の作品のことも教えて下さい。

【大坪】
もう一つの作品は、「ウォータークロゼットストーリー」というマンガです。
元々はFacebook上の投稿だったエピソードを、僕の方でマンガ化しました。

【まんが】慌ててトイレに入ったら女子トイレ! 究極のピンチを切り抜けた男の漫画『ウォータークローゼットストーリー』が話題

wc0001

ロケットニュース24や、1000万ダウンロードのグノシーやSmart Newsにも掲載されました。
アルファルファモザイクというまとめサイトでは、その月の月間の芸能情報を抑えて、アクセス数1位になりました。ちなみに2位は「とんねるず解散か?」というニュースでした。

【マ編】
凄い反響ですね。

【大坪】
これも制作前から、ある程度の反響はあるかなと思っていたので、予測通り広がってホッとしたのですが、芸能情報より自分のマンガが多くのアクセスを集めたことはすごく嬉しかったですね。

【マ編】
どのくらいの方が読まれたのでしょうか?

【大坪】
具体的な読者数は測定ができないのですが、10以上の媒体に取り上げられて、その中でアクセス数を公開しているサイトが2つだけあったのですが、その2サイト合計で60万回アクセスがありました。
なので、すべての掲載媒体を合わせると、少なくとも100万人くらいは読んでくれたかなと…。

【マ編】
公開前にこの位は広がるかな?と予測できるものなのですか?

【大坪】
ある程度は、できます。
もちろん外す時もありますが…、動画の時のように、この作品は自信がありました。
ただどの作品について言えるのですが、数百再生しかされない・・・というリスクは常につきまといます。
数百しか見られていない作品と制作する前の段階では、全く条件は同じだからです。
動画の方も制作前から300-400万回は再生されると思っていましたが、ただ普通に動画を撮影しただけでは、数千アクセスで終わっていたと思います。実際に同時期に出されたパワードスーツの動画でも数百アクセスで終わっている動画もあります。制作前の段階では、それらの作品と全く同じなんです。自分の頭の中だけで、これは行ける・・・と勝手に思っているだけなので…。

【マ編】
数百万見られる作品と、数百しか見られない作品は、何が違うのでしょうか?

【大坪】
いろいろと違うのですが、言葉にしてもなかなか伝わらない領域のお話かも知れません。
そこを組み上げるまでには、過去の膨大な情報を根拠にした論理的な整合性が自分の中にはあるのですが、その根拠を一つ一つ説明してもピンと来ないかもしれません。僕が勝手に妄想しているだけと思われても仕方のない領域のお話しです。
例えば、まだいつ発表するかまだ決めていないのですが、テレビドラマにできるかなぁ…と勝手に思っている作品を作っているのですが、傍から見ると何を根拠にそんな事を言っているのか全く分からないと思います。根拠となる情報が膨大過ぎて伝えられない領域でのお話しなんです。
だから分かりやすく言うと、信じてもらうしかない。

【マ編】
丁寧に説明すれば、伝わりませんか?

【大坪】
ある程度は理解してもらえると思いますが、根拠のベースとなる情報を共有していないので、なかなか難しいんです。
あとぶっちゃけ企業秘密的な領域のお話も、かなりあったりするので…。全部は説明が難しいのです。

例えば、パワードスーツの実機を作るにしても、技術者の町をスカウトするときに「CMくらいは出れそうだよねぇ…」という話が瞬時に共有できたので、企画が先に進みました。これを会った初日に何を言っているんだ??と思われてしまうと、企画は成立しません。実際にパワードスーツは、GoogleのCMに出演することができました。

編集部/注)その後、2016年9月にトヨタ自動車のCROWNのCMにも出演しました。

 

【マ編】
ベビーメタルも出演しているあのCMのことですね。

【大坪】
数百万の視聴を想定すると、100%作品のクオリティだけにフォーカスするしかないのですが、これはこれでなかなか難しいのです。
100%の人に刺さるコンテンツは存在しないので、自分の把握しているマーケットに対しての精度を高めるしかないというのが、基本的なセオリーになります。サッカーに例えると、センターリングの精度と同じように、数センチずれるだけで得点できなくなってしまいます。少しずれただけで、全く面白味がない作品が出来上がってしまうのです。

「ウォータークローゼットストーリー」も、公開前には、かなりの低評価を受けたりもしました。
なぜ低評価となったのか理由は明快なのですが、ここの理由の共有も難しいのが現状です。
「そんなハズはない!それはあなたの思い違いだ!」で、一蹴されてしまうと思います。
ただそれは仕方のないことで、作品の評価というのは本当に難しいので、誤った判断が下されるのが普通だと思った方がよいかと思います。

ドワンゴの川上会長が、発売前の「もしドラ」を読んで酷評したことがあったのですが、結果として「もしドラ」は280万部売れました。
川上会長は間違いなく天才なのですが、その天才がなぜ予測できなかったのかも、コンテンツ制作者側から見れば明快に説明することができます。
ただ著者の岩崎夏海さんは当時まだ無名でしたが、執筆前から200万部越えすることを編集者に明言していました。書いてる本人には、それが分かるんです。
書いてる本人が売れないと思っている作品が200万部越えするよりかは、200万部越えするなと確信しながら書いた作品が200万部越えする確率は比較にならないくらい高いのです。

250万再生したパワードジャケットの動画もそうですし、100万人に広がった「ウォータークローゼットストーリー」もそうなのですが、まだ1行も書き出す前に分かるんです。ここら辺の感覚が理解できないと、膨大な時間を無駄にすることになってしまうので、こちらから企画を降りることもかなりあります。お互いの時間を浪費してしまいますからね…。

意思決定に関する取り決めを、事前に調整する能力も、漫画をヒットさせるには必須です。

 

【マ編】
話は変わりますが、現在はフォトリアルなマンガロイド(3DCG漫画)に挑戦中ですね。

【大坪】
そうですね。
「エクゾジャケット」の11話目を現在作っているのですが、10話目までを六角大王、11話目からをDAZ studio(ダズスタジオ)というソフトで作っています。

【マ編】
途中から使用している3DCGソフトを変更するというのは、かなり大きな変化だと思いますが…。

【大坪】
例えるなら、原作付きのマンガで、作画をしている漫画家が連載途中で変わってしまった…という感じだと思います。

【マ編】
まだマンガの歴史上起きたことがないですよね・・・?途中で作画している漫画家が変わるということは…。

【大坪】
そうかも知れません…(笑)
ただ、作画するソフトはDAZ STUDIOに変わりますが、ネームを作っているのも3Dキャラクターに演出を施しているのも僕なので、意外とすんなりと読んで頂けると思っています。

【マ編】
うまく制作できそうですか?

【大坪】
まだ何とも言えない状況なのですが、フォトリアルでもうまく作れそうな手応えはあります。

【マ編】
エクゾジャケット11話目の発売はいつになりますでしょうか?

【大坪】
2016年10月1日です。「マンガ on ウェブ」で公開致します。
いよいよパワードスーツのバトルが始まるので、是非読んで頂きたいですね。

【マ編】
今日はいろいろはありがとうございました。

【大坪】
ありがとうございました~。

 

———————————————————————————————-

ということで、如何でしたでしょうか。

フォトリアルになったマンガロイド(3DCG漫画)。楽しみですね。

現在、マンガロイドjpでは、フォトリアルになった「エクゾジャケット」の制作過程を随時公開しています。

マンガ史上類を見ない途中で作画が変わる…という大改革。

どのような作品に仕上がるのか、ご期待下さい!!

 

 

Pocket
LINEで送る

関連記事

  1. 【インタビュー/Daz Studio】天川和香先生が登場(前編)…
  2. 【インタビュー/Daz Studio(R-18)】カオスさん
  3. 【インタビュー】野上人明(マンガ原作者)
  4. 【インタビュー/Daz Studio(R-18)】randy88…
  5. 【インタビュー/Daz Studio】天川和香先生が登場(後編)…

おすすめ記事

  1. 【DAZstudio】DAZのフリーランスの方々を探すサイト
  2. 【Daz Studio】髪の毛(hair)の色が変更できない問題
  3. 【DAZSTUDIO】専門雑誌の最新号が出ました。Vol.24
  4. 【DAZ STUDIO】Runtime DNAをご紹介
  5. 【コラム】拡張型スターシステムの可能性
  6. 【DAZ Studio】レンダリング比較Irayと3Delight
  7. 【Daz Studio】新しい髪形(hair)がずれてしまう問題
  8. 【コラム】佐藤秀峰が描く電子書籍の未来

カテゴリー記事一覧

  1. 3DCG漫画の女の子
PAGE TOP